
■ はじめに:持ち上げた瞬間、ずしりとくる夏の相棒
昭和の夏。
エアコンはまだ特別な存在で、
各部屋にあるものではなかった。
そこで活躍したのが――
金属製の扇風機である。
いざ動かそうと持ち上げると、
「……重い」
今の軽量プラスチック製を知ると、
驚くほどの重量感だ。
なぜ昭和の扇風機は、
あそこまで金属製で、重かったのか。
それには、
当時ならではの明確な理由があった。
■ 結論:重くないと「危険」だった
まず結論から言おう。
昭和の扇風機は、重くなければ安全ではなかった。
便利さやデザイン以前に、
安定性と安全性が最優先だったのである。
■ 羽根が「本気で風を送っていた」
昭和の扇風機の羽根を思い出してほしい。
・大きい
・金属製
・回転力が強い
今の柔らかい樹脂製とは、
まったく別物だ。
この羽根が回るとどうなるか。
・風量が強い
・回転の力も大きい
もし本体が軽かったら、
・振動する
・動く
・倒れる
だからこそ、
土台は重く作られる必要があった。
■ 転倒防止は「重さ」で解決していた
現代の扇風機は、
・軽量設計
・転倒防止センサー
・自動停止機能
が当たり前。
だが昭和には、
そんな電子制御はない。
ではどうするか。
重くして、倒れないようにする。
極めてシンプルだが、
確実な方法だった。
■ 金属は「丈夫で長持ち」だった
昭和の家電は、
一度買ったら、長く使う
という前提で作られていた。
金属製の扇風機は、
・落としても壊れにくい
・熱に強い
・経年劣化しにくい
プラスチックが
今ほど信頼されていなかった時代、
金属こそが安心素材だった。
結果として、
重量は増えるが、寿命も延びた。
■ モーターも、とにかく大きかった
扇風機の心臓部であるモーター。
昭和のモーターは、
・大型
・余裕設計
・金属ケース
必要最低限ではなく、
壊れないこと最優先。
このモーター自体が、
かなりの重量を持っていた。
■ 扇風機は「家の中心」で使われていた

昭和の扇風機は、
・居間の真ん中
・家族全員に風を送る
・一日中使う
そんな存在だった。
頻繁に動かすより、
・置いたら動かさない
・多少ぶつかっても問題ない
据え置き前提の家電だったため、
重さは大きな問題にならなかった。
■ 風量こそが「性能」だった
昭和の家電評価は、
非常に分かりやすい。
扇風機なら、
・強い風が出る
・遠くまで届く
それが
良い扇風機の条件。
強風を出すには、
・羽根が大きい
・回転力が必要
・本体が安定している
つまり、
重い=よく効く
という価値観が、
自然に成立していた。
■ 音も重さも「働いている証拠」だった
昭和の扇風機は、
・ブーンという音
・風切り音
が、はっきりしていた。
だがそれは、
・動いている
・仕事をしている
という安心材料でもあった。
静かで軽い機械は、
どこか頼りなく感じられた。
■ 子ども対策は「ガードと重さ」だった
今のような、
・チャイルドロック
・柔らか羽根
は存在しない。
その代わり、
・金属製のしっかりしたガード
・簡単には倒れない重さ
で、
事故を防いでいた。
昭和の安全対策は、
物理的に守るが基本だった。
■ そして時代は「軽さ」を求め始めた

平成以降、
・プラスチック技術の進化
・安全基準の変化
・家電の多台数化
により、
重い家電=扱いにくい
という価値観が広がる。
扇風機は、
・軽量
・静音
・省電力
へと進化していった。
■ まとめ:重さは、安心のかたちだった
昭和の扇風機が金属製で重かった理由は、
・強力な羽根を支えるため
・転倒を防ぐため
・金属が信頼されていた素材だった
・大型モーターを搭載していた
・据え置き前提の家電だった
・風量が性能の証だった
すべてが、
昭和の暮らしに合っていたからだ。
軽さを手に入れた代わりに、
失われた“どっしりした安心感”。
あの重い扇風機は、
夏を本気で乗り切るための
頼れる相棒だったのである。
※本記事は昭和期の一般的な家電・生活事情をもとにした解説です

