
■ はじめに:開けるたびに、冷凍室は雪景色
昭和の冷蔵庫といえば――
まず思い出すのが 霜 だ。
冷凍室を開けると、
そこはまるで 南極基地。
・氷の壁
・霜の塊
・白く覆われたトレー
時には、
ドアが閉まらなくなることもあった。
だから定期的に、
・電源を抜く
・溶けるまで待つ
・水浸しになる
という 霜取り儀式 が必要だった。
では一体、
なぜあれほど霜が付いたのか。
■ 結論:冷やす方式が“シンプルすぎた”
まず結論から言おう。
昭和の冷蔵庫は、冷やし方が非常にシンプルだった。
・冷却器がむき出し
・霜を自動で溶かさない
・断熱も今より甘い
つまり、
霜が付くのは「欠陥」ではなく
当たり前の仕様 だったのだ。
■ 冷却器が「直接冷やす方式」だった
昭和の冷蔵庫は、
直冷式(ちょくれいしき)
と呼ばれる方式が主流だった。
これは、
・冷却器(金属板)を
・庫内に直接配置し
・そこを冷やして温度を下げる
という方法。
冷たい金属に、
庫内の湿気が触れると――
水滴 → 氷 → 霜
へと変わる。
しかも、
・一度付く
・冷える
・さらに付く
という無限ループ。
結果、
分厚い氷の壁 ができあがる。
■ 空気中の「湿気」が原因だった

霜の正体は 空気中の水分 だ。
冷蔵庫のドアを開けるたび、
台所の湿った空気が流れ込む。
・夏は湿気が多い
・煮炊きでさらに湿る
・温度差が大きい
だから、
昭和ほど霜が付きやすい環境もなかった。
そして庫内で冷やされると、
湿気はすべて 霜 へ。
■ 自動霜取り機能がなかった
今の冷蔵庫は、
自動霜取り(ファン式)
という機能を備えている。
・霜が付く
・ヒーターで少し溶かす
・水として排出
これを自動で繰り返す。
しかし昭和では――
・部品が増える
・コストが高い
・壊れやすくなる
という理由で、
「自分で霜を取る」のが常識
だった。
■ 冷凍庫が常にフル稼働していた
当時の冷凍室は、
・上段の小さなスペース
・氷や冷凍食品を入れるだけでパンパン
しかも、
・冷やす力が弱い
・温度も安定しない
だから冷却器は
常に全力運転。
冷やしすぎれば冷やすほど、
霜もどんどん増えていく。
■ 断熱材が現在ほど優秀ではなかった
昭和の冷蔵庫は、
・断熱材が薄い
・密閉性も今ほど高くない
そのため、
・外の熱が入りやすい
・内部が結露しやすい
・結果、霜も増える
つまり
冷蔵庫は常に 戦っていた のだ。
■ 霜取りは「家事のひとつ」だった

霜が積もると起こる問題は多い。
・庫内が狭くなる
・冷えが悪くなる
・電気代が上がる
だから母親たちは、
定期的にこうしていた。
・コンセントを抜く
・ドアを開けたまま放置
・タオルを何枚も敷く
・溶けた水をひたすら拭く
ときには
ドライヤーで温風を当てることも。
いま思えば手間だが、
それも 昭和の暮らしの風景 だった。
■ そして時代は「霜が付かない冷蔵庫」へ
技術が進み、
登場したのが ファン式冷蔵庫。
・庫内の空気を循環
・冷却部分は別室
・霜は自動で溶かす
結果――
霜取り不要。
これは、
まさに革命だった。
しかも、
・温度が一定
・食材が傷みにくい
・収納もしやすい
暮らしが一気に
次の段階へ進んだ瞬間だ。
■ それでも直冷式は「悪者」じゃない

じつは直冷式にも
良いところがある。
・冷えが早い
・構造がシンプル
・故障しにくい
・電気代が安い
だから今でも、
・小型冷蔵庫
・業務用の一部
では現役だ。
霜が付く=古い
ではなく、
“設計思想が違う” だけ。
■ まとめ:霜は、技術の途中段階だった
昭和の冷蔵庫が霜だらけだった理由――
・直冷式だった
・湿気が多かった
・自動霜取りがなかった
・断熱性が今より低かった
すべては、
技術が進化する前の“通過点” だ。
不便だった。
でも、その不便さの中で――
・氷を作る喜び
・霜取りの思い出
・家族の会話
そんな記憶が
冷蔵庫と一緒に残っている。
昭和の冷蔵庫は、
ただの家電ではなく
“暮らしの温度”を
いっしょに見守ってきた存在
だったのだ。
※本記事は昭和期の一般的な冷蔵庫・住宅・生活事情をもとにした解説です

