昭和の照明はなぜ「ひもスイッチ」だった?

■ はじめに:引っ張ると、カチッと明かりが変わった

昭和の部屋に入ると、
まず目に入るものがある。

天井から垂れ下がる、
一本の白いひも。

それを引っ張ると、

カチッ。
カチッ。

明るくなったり、
少し暗くなったり、
消えたり。

今では見かけなくなったが、
昭和の照明といえば、
この「ひもスイッチ」が定番だった。

なぜ昭和の照明は、
あれほどまでに
ひもスイッチ一択だったのか。

そこには、
昭和の暮らしそのものが反映されていた。

■ 結論:立ち上がらなくていい仕組みだった

まず結論から言おう。

ひもスイッチは、昭和の生活様式に最適だった。

便利だからではない。
おしゃれだからでもない。

「それが一番、合理的だった」
ただそれだけの話だ。

■ 昭和の部屋には「壁スイッチ」がなかった

今では当たり前の壁スイッチ。
だが昭和の住宅では、

・そもそも設置されていない
・部屋の入口にない
・後付けが難しい

という家が多かった。

特に古い木造住宅では、

・配線が最小限
・工事コストを抑える
・増設が簡単

こうした理由から、
照明器具そのものにスイッチを付ける
という発想が主流だった。

それが、
ひもスイッチである。

■ ちゃぶ台生活と相性が抜群だった

昭和の居間の中心は、

・ちゃぶ台
・座布団
・畳

つまり、
床に座る生活だった。

この生活で、
壁スイッチはどうなるか。

・立ち上がる必要がある
・暗い中を歩く
・足元が危ない

だが、ひもスイッチなら、

・座ったまま
・手を伸ばして
・その場で操作

できる。

ちゃぶ台生活と、ひもスイッチはセット
だったのである。

■ 寝室では「神の装置」だった

寝室でも、
ひもスイッチは大活躍する。

布団に入ったあと、

・電気を消す
・もう一度つける

そのたびに
立ち上がるのは面倒だ。

ひもスイッチなら、

・布団に寝たまま
・手を伸ばして
・消灯できる

これはもう、
昭和版リモコンである。

■ 構造が単純で、壊れにくかった

ひもスイッチの中身は、
驚くほど単純だ。

・引っ張る
・接点が切り替わる
・点灯パターンが変わる

電子部品は、ほぼゼロ。

その結果、

・故障しにくい
・修理しやすい
・長く使える

昭和の家電思想
――「壊れにくさ正義」
に、完璧に合っていた。

■ 明るさ調整は「段階式」で十分だった

昭和の照明は、

・全灯
・豆電球
・消灯

この3段階が基本。

細かな明るさ調整は、
そもそも求められていなかった。

・夜は暗め
・作業は明るく

これで、
生活は十分回っていた。

ひもスイッチは、
その価値観にぴったりだった。

■ 子どもでも使えた

昭和の家庭では、

・子どもが自分で電気をつける
・消し忘れたら怒られる

そんな場面が日常だった。

ひもスイッチなら、

・背が低くても届く
・操作が直感的
・間違えにくい

教育的にも、
非常に都合が良かった。

■ 工事不要=コストが安かった

住宅全体で見ても、
ひもスイッチは優秀だ。

・壁に穴を開けない
・配線がシンプル
・後付けが簡単

大量に住宅を建てる時代、
コストと効率は最重要項目。

ひもスイッチは、
その要求を満たしていた。

■ そして時代は「壁とリモコン」へ

平成以降、

・洋室化
・ベッド生活
・住宅設備の進化

により、

・壁スイッチ
・リモコン照明

が主流になる。

立ち上がることも、
引っ張ることも、
不要になった。

ひもスイッチは、
静かに役目を終えていく。

■ それでも、完全には消えなかった

今でも、

・和室
・トイレ
・物置

では、
ひもスイッチが現役だ。

理由は簡単。

・直感的
・壊れにくい
・分かりやすい

完成度が高すぎる
からである。

■ まとめ:ひもスイッチは、昭和の最適解だった

昭和の照明がひもスイッチだった理由は、

・壁スイッチが一般的でなかった
・床生活と相性が良かった
・寝室で便利だった
・構造が単純で壊れにくかった
・段階調整で十分だった
・工事コストが安かった

すべてが、
昭和の暮らしにぴったり合っていた。

今見ると懐かしいが、
あれは決して古い仕組みではない。

当時の最先端で、最適解。

それが、
ひもスイッチ照明だったのである。

タイトルとURLをコピーしました