
■ はじめに:立ち上がって操作するのが当たり前だった
昭和のテレビを思い出してほしい。
チャンネルを変えるとき、どうしていたか。
――そう、
立ち上がって、本体のつまみを回していた。
今なら考えられないが、
当時はそれがごく自然な光景だった。
なぜ昭和の家電には、
今のようなリモコンがなかったのか。
そこには、
「技術が未熟だった」だけでは済まされない
時代ならではの理由があった。
■ 結論:リモコンは“必要とされていなかった”
まず結論から言おう。
昭和の家電にリモコンがなかった最大の理由は、
「不便だと思われていなかった」からだ。
今の感覚で考えると、
ここが一番の落とし穴になる。
■ 家電は「近くで使うもの」だった
昭和の家電は、
・部屋の中央
・家族が集まる場所
・手の届く距離
に置かれていた。
テレビも、
・一家に一台
・居間に一台
・みんなで見る
だから操作する人も、
自然と近くにいる。
わざわざ
遠隔操作する必要がなかった。
■ チャンネル数が、そもそも少なかった
昭和のテレビ放送は、
・NHK
・民放数局
せいぜい
5〜7チャンネル程度。
チャンネルを変える操作も、
・ガチャ
・ガチャ
数回回せば終わり。
これを
「面倒」と感じる場面が、
ほとんどなかった。
■ 操作は「機械に触る」ものだった
昭和の家電は、
・つまみ
・ダイヤル
・レバー
触って操作すること自体が前提だった。
つまみの感触、
カチッという音、
回した手応え。
それが
操作している実感だった。
ボタンを押すだけの操作は、
まだ主流ではなかった。
■ 技術的に「コストが高すぎた」
もちろん、
技術の問題も大きい。
昭和の時代、
・赤外線制御
・無線通信
・小型電子部品
は、
まだ高価で不安定だった。
もしリモコンを付けたら、
・本体価格が跳ね上がる
・故障リスクが増える
・電池管理が必要
それを
家庭用家電に載せるメリットが薄かった。
■ 壊れるものは、できるだけ減らしたかった
昭和の家電は、
長く使うことが正義
という思想で作られていた。
リモコンは、
・落とす
・壊す
・なくす
リスクの塊だ。
メーカー側も、
・余計な故障要因
・クレームの元
になるものは、
最初から載せなかった。
■ 「一家の誰が操作するか」が決まっていた
昭和の家庭では、
・父がチャンネルを回す
・母が家電を管理する
といった
暗黙の役割分担があった。
操作権が限られている以上、
リモコンを回す必要もない。
むしろリモコンがあれば、
・勝手に変えられる
・揉める
そんな懸念すらあった。
■ リモコンが広まったのは「生活が変わったから」

平成に入り、状況は一変する。
・チャンネル数の増加
・家電の大型化
・個室化
・長時間視聴
こうして、
近づかずに操作したい
という需要が生まれた。
リモコンは
技術の進化というより、生活の変化の産物だった。
■ そして今、操作は「触れない」方向へ
現在では、
・音声操作
・スマホ連携
・自動制御
リモコンすら
使わない時代になりつつある。
だがその原点は、
**「立ち上がって操作していた昭和」**にある。
■ まとめ:リモコンがなかったのは、合理的だった
昭和の家電にリモコンがなかった理由は、
・近くで使う前提だった
・チャンネル数が少なかった
・触る操作が当たり前だった
・技術的コストが高かった
・壊れる要素を減らしたかった
・生活スタイルに合っていた
すべてが、
昭和の暮らしに最適化されていたからだ。
不便に見えて、
実は一番無駄がなかった。
それが、
昭和家電という存在なのである。
※本記事は昭和期の一般的な家電・生活事情をもとにした解説です

